kim-yh’s diary(学問のふくろう)

研究や、日々の思考を文字化しています。

留学生と渡日生の違い

多文化共生、そして高校進学特別枠について

     by 橋本先生 大阪府立八尾北高等学校教員

 

「中国にルーツをもっている児童生徒の高校進学と進路調査」の一つとして、大阪府立八尾北高校にお世話になっている。本日、窓口である橋本先生に大学にお越しいただき、講演を聞かせていただいた。

 帰国生や、渡日生(外国にルーツをもつ児童生徒)の受入は日本全国において「東の神奈川、西の大阪」と評価されるほど、大阪府立高校の受入は充実している。いわゆるニューカマーの生徒の高校進学率は大阪の場合90%前後である。ちなみに、日本人の生徒の場合日本全国で高校進学率は98%~99%、ほぼ100%である。それに比べて日本全国で外国人児童生徒の高校進学率は40%~70%にとどまっている。大阪府の外国人生徒の高校進学率が高い原因は「外国人生徒入試」という特別枠を設けているからである。小学校4年生以降に来日した外国にルーツを持っている生徒ならこの特別枠で大阪府に設けてある8校の「特別枠」応募することができる。

  渡日生と外国人留学生の違いはなにか。年齢とか、背景などの違いもあるが、一番大きな違いは「気持ちの問題」である。留学生は自分のアイデンティティを持って、自らの意志で、日本での勉強を目的に来日しているが、渡日生は「親の都合」でなんとなく来日するケースが多い。すなわち、心の準備がまだできていないまま、もしくは来日が彼らにとってどういうことを意味しているかもあまり深く考えずになんとなく来て、いきなり異文化の中にぽつんと投げ出されているのと同じである。

 大阪に来ている中国人の生徒の多くは、残留孤児の流れ、親の仕事の関係、国際結婚による呼び寄せによる。大阪府立八尾北高校の取り組みは主に「多文化共生部オアシス」が中心となって、日本語力を伸ばすことや母語保障、民族アイデンティティの確立のための部活などに力を入れている。無論抽出授業も行っている。これらの取り組みは神奈川県が先頭に立ってこれまでやってきたのを、大阪が参考にしてそのあとを追う形であるという。

 特別枠で入ってきた生徒を普通の生徒と比べてみて、一番大きな違いはやはり多様な家庭環境を持っているとのことである。日本の一般の生徒にはないような背景を持った生徒が多いことが特徴でもある。

  何故彼らを支援しなければならないのか。1996年放映された「小さな留学生」を見れば分かるが、困っている子達をそのまま放置せず、何らかの形で助けなければならない、初期段階でのケアは今後のそのこたちの長い人生につながる大事なことであり、視点を変えれば日本社会の将来の問題点を未然に防ぎ、「コスト削減」につながる重要な課題である。 

 日本を含め、アジアの国々はその歴史的な背景からも欧米諸国とは違って「多文化共生」に対する理解に乏しい。「多文化共生社会」と呼ぶにはまだまだはるかに遠い状況であるなか、大阪府がこれほど外国人生徒の受入を積極的に推進しているのもやはりかねてからの「人権教育」が背景にあったからこそ、短時間に地域社会や教員、保護者達の理解を得ることができたと考えられる。

 現代社会の課題を解決するためには、文化や歴史、地域特性など過去をさかのぼって分析する洞察力が必要だということを改めて感じた瞬間である。