kim-yh’s diary(学問のふくろう)

研究や、日々の思考を文字化しています。

東大経済学者の視点からのグローバル化

メモ;グローバル大学の国際化現状と課題(2015.11.27.3pm-6pm.会場:ブルームパーク 丸の内ビル27F シンポジウム)

 

*大学の経営という視点からのシンポだが、時代の流れ、大学の現状がわかり、今時の若者はどうすべきかを考えさせる良い内容が多いので是非参考に。

 

文部科学省は大学の国際競争力を高めるために、重点的に財政支援する「スーパーグローバル大学/高校」を選定し、グローバル人材の育成、世界に通じる研究の後押しに力を入れている。

グローバル大学とは、大学の国際化を促進するために必要な施策は、各校はどのような活動を行っているかについて議論の場を設ける。

 

事例1:東大 大学院経済研究科 金融システム専攻 上田和夫 教授

「東大における金融・経済教育のグローバル化に向けた取り組み」

内容:

Ⅰ。現状

①学問の国際化:経済金融学はそもそも欧米からの輸入学問である。それゆえに英語学術氏への論文投稿の数を増やすこと、教員の50%が海外での学位を獲得しているか、外国人教員であてている。それでも現状としては世界大学ランキングで95位(経済学分野にかぎっての順位?)であり、アジアではシンガポールが一番先を走っている。学部生はほとんど卒業して就職する。院生は他大学からの進学者か、もしくは海外からの留学生が大多数である。しかも、院に進学したといっても途中で英米の博士に進んでいて、優秀な研究者を輩出し、継続的に東大の研究者の質を高めることは難しい。

②教育面での国際化:英語だけの講義も多くなり、ほとんどの教員が要求されるとなんとか英語で授業できる。ゆえに、英語だけの外国人修士も多い。

③研究面での国際化:植田ゼミを例に→金融セミナーを開いているが、年1回必ず海外の金融センターの現場に訪問し(ニューヨーク)、合宿しながら英語と専門分野のスキルを高める。実際アメリカの株式専門会社で株式の運用方式などについて英語で討論会を行ったりするが、学部生の受けるショックは大きい。単に英語だけの問題ではない。死んだ学問、即ち、自分たちの力がこれ程度かというショックを受けて帰ってくる。語学の問題でもなく、専門知識の問題でもない。センスの問題だ。勉強した知識を実際につなげるコミュニケーションのセンスというか、いくら東大でも世界にでたらこれぐらいのレベルにしかならない。つまり、今までの教育全般にかかわる根本的なことが問われる。受入側としても東大生に至大な関心をよせていたが、現実上、討論会もままならぬ、せっかくいろいろ準備したのにそもそも質問自体ができない状況をみて、二回、三回は訪問を受け入れてくれないはずだ。訪問先を選ぶことも本当に「焼け方農業」みたいにすでにほとんど訪問していて、これからどうやって受け入れ先を頼むか悩みである。

帰国してから学部生の意識転換につながり、内向けだった彼らがさらに留学して国際的なセンスを磨くために飛び出すのはセミナーとしては、この意識転換に成果を見出している。現場では失敗して観光並みになってしまうが。

 

Ⅱ 国際化の障害

①教育面では:生きた英語の習得と意識の低さである。学生が国際化の認識、世界で自分がどの位置にあるかを早く悟ってもらいたい。

②研究面では:今の学問は欧米中心になっている。教員の給与が低すぎる。20-30代の研究者で500万円ー700万円、それに比べて欧米は2000万円である。1:2の結果。優秀な研究者はみんな欧米に抜かれる。欧米に留学して、破格的な待遇に日本に再度戻るのは難しい。研究者はつらくて孤独な仕事である。それなりのインセンティブがないと研究も停滞するし、光栄心を高めることもできない。日本が経済的に注目を浴びていたときには、学問も日本が中心となってたくさんの人材が集まったが、今は現状が違う。それなりの評価がないと経済の中心となっている欧米をすてて、日本でがんばりたいという気持ちにならない。少なくとも経済学の分野では。

③事務職員の国際能力欠如。研究や、様々なことで海外の研究者や機関と英文でやり取りすべきことが多いが、教授本人が自分で通訳の仕事もやらなければならない。大学の事務職員の国際化は至急である。単に一人二人の採用では足りない。

*学生も日本一に東大に入って、まあまあの英語をやって、まあまあの企業に入って、家庭を作って、まあまあの安定した生活をすればよい。世界に出て一旗あげて、国を変える、国をリーダーする。気概も、能力もない。まさに国際化の低さである。

 

北京大学の学生さんたちと交流の機会があったが、二つの大学のグループを比べてみても、北京大学の学生たちは、野心=国のために、何か自分の能力を発揮して、何か大きなことを一生懸命にやってみたいというモチベーションが半端ではなかった。気概を感じた。

これは根本的な教育に差があると思えざるをえない。

 

感想:経済学者なのに、「大学の経営」という視点から、大変面白く、現実のデータに基づいて、誰でもわかりやすく、適切な内容で説明してくれて、やはり東大の先生は違うという気がした。質の高い教育は質の高い学生を作る。大変共感できた内容が多かった。